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続・Linuxコマンド入門 ~パイプとリダイレクトを使いこなす~
Linuxコマンドの出力に対して処理してデータを加工したり、処理を自動化する「コマンド結合」の方法について紹介します。
前回は、コマンドの実行結果の行き先をファイルに変える「リダイレクト」”>”と”>>”を学びました。
【>/>>】「結果をファイルに保存」- リダイレクトを理解する-【続・Linuxコマンド入門 #1】
Linuxコマンドの結果をファイルに保存したい?「リダイレクト」を学べば解決!> (上書き) と >> (追記) の違い、エラー出力 2> の使い方を初心者向けに解説。(118文字)
今回は、「パイプ (|)」を学びます。 リダイレクトが結果を「ファイル(バケツ)」に保存するのに対し、パイプは「あるコマンドの結果を、次のコマンドに直接渡す」ための、最も重要な技術です。

1. | (パイプ) とは?
| (パイプ) は、コマンドとコマンドを繋ぐ「パイプライン」の役割を果たします。
(キーボードでは、Shiftキーを押しながら \ キーを押すと入力できます(キーボード配列によって違う))
具体的には、コマンドAの「標準出力 (stdout)」を、コマンドBの「標準入力 (stdin)」に直接接続します。

前回の「リダイレクト(>)」は、蛇口の水を一度「バケツ(ファイル)」に溜める操作でした。 今回の「パイプ(|)」は、蛇口(コマンドA)にホースを繋ぎ、そのホースを次の機械(コマンドB)の投入口に直接差し込むイメージです。
イメージ:工場のベルトコンベア
パイプ | は、工場の「ベルトコンベア」によく例えられます。
- 最初の機械(コマンドA)が、製品(データ)を作ります。
- それがベルトコンベア(パイプ
|)に乗って流れます。 - 次の機械(コマンドB)が、流れてきた製品(データ)を受け取って、次の加工(絞り込みなど)を行います。
この流れ作業により、中間ファイル(バケツ)を一切作らずに、データを高速に処理できるのです。
[実際]|はどこで使われている?
|はいろんな場面で、お世話になるシェル演算子です。ここで習得して自由に扱えるようになるとよいですが、ターミナルでコマンドをそこまで打たないという人でも、以下のような場面で見たことがあると思います。lsmodで一覧をgrepに渡し、ドライバの検索をするというケースで使うことが多いです。
🔍 例:NVIDIA ドライバを検索
lsmod | grep nvidia🔍 例:Wi-Fi 関連ドライバを検索
lsmod | grep r816🔍 例:Realtek 系のネットワークドライバを検索
lsmod | grep r8162. パイプ | の使い方
使い方は非常にシンプルです。
[コマンドA] | [コマンドB]これを実行すると、以下の順番で処理が流れます。
コマンドAが実行されます。コマンドAがターミナルに表示するはずだった結果(標準出力)が、画面には出ず、すべて|を通じてコマンドBに渡されます。コマンドBは、渡されたデータを「入力」として受け取り、処理を実行します。- 最終的に、
コマンドBの結果だけがターミナルに表示されます。
3. | で覚えておくといい使い方例
パイプの真価は、第一シリーズ”Linuxコマンド入門”で学んだコマンド群と組み合わせることで発揮されます。
例1:ls -l の結果から、特定の単語だけを grep で絞り込む
第一シリーズで学んだ ls -l と grep を組み合わせる、最も代表的な使い方です。 ls -l だけだと、ファイルが多すぎて見づらい場合があります。
ls -l
# total 16
# -rw-r--r-- 1 user group 875 11月 11 15:00 memo.txt
# drwxr-xr-x 2 user group 4096 11月 12 10:30 documents
# -rw-r--r-- 1 user group 1024 11月 10 09:00 old_file.txt
# drwxr-xr-x 2 user group 4096 11月 15 04:00 temp_dataここで、「documents」という名前が含まれる行だけを見たい場合、| を使います。
ls -l | grep "documents"
# drwxr-xr-x 2 user group 4096 11月 12 10:30 documents処理の流れ:
ls -lが4行のリストを(terminal画面ではなく)パイプに流します。grep "documents"がその4行を受け取り、「documents」という文字列が含まれる行だけを絞り込みます。- 最終結果(1行)だけが画面に表示されます。
例2:cat や dmesg の長い出力を less で閲覧する
cat で長いファイルを表示したり、dmesg(システムの起動ログ)を実行すると、結果が多すぎて画面を流れていってしまいます。
# 実行すると、ログが一気に流れて最後しか見えない
cat /var/log/syslogこの「一気に流れてしまう結果」を、less コマンドに渡してじっくり閲覧できるようにします。
cat /var/log/syslog | less
# (less の閲覧画面に切り替わり、ログの先頭から閲覧できる)(※ less /var/log/syslog と直接実行するのと同じですが、cat のような「標準出力に結果を出すコマンド」なら何でも less に渡せる、という点が重要です)
まとめ
今回は、コマンドAの結果をコマンドBに直接渡す「パイプ (|)」を学びました。
パイプは、リダイレクト(ファイル保存)とは違い、データを「流れ」のまま処理するためのもの。
ls | grep のように、コマンドを組み合わせることで、linuxコマンドの操作が飛躍的に楽に
これで、「リダイレクト(>)」(結果をファイルに保存する)と「パイプ(|)」(結果を次のコマンドに渡す)という2つの強力な「流れ」を操れるようになりました。
次回は、この2つを組み合わせた総まとめの実践編です。 「ファイルの中身を検索し、行数を数え、結果をファイルに保存する」といった、一連のデータ加工に挑戦します。
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