『売ります。赤ちゃんの靴。未使用』——6語文学を投稿するWebサービスを個人開発したい【構想編】

みなさんは、「Six-Word Memoirs(6語の回想録)」あるいは「Six-Word Storys (6語の物語)」という言葉を聞いたことはありますか? インターネット黎明期に流行った遊びであり、海外では文芸ジャンルとして確立されている「極限のショートショート」です。 

(日本だと形式は違いますが”ショートショート“(極限まで無駄をそぎ落とした小説)で星新一さんが有名ですよね)

私がこの概念に出会ったのはつい最近のことですが、その代表作とされるアーネスト・ヘミングウェイの逸話を見て、雷に打たれたような衝撃を受けました。

“For sale: baby shoes, never worn.” (売ります。赤ちゃんの靴。未使用)

たったこれだけ、これが小説の全文になります。しかし、この6語の裏には、「生まれてくるはずだった(あるいはすぐに亡くなってしまった)子供」と、「そのために用意していた靴を手放さなければならない親の悲しみ」という、とてつもなく重い背景が隠されています。

書かれていない部分を、読者の想像力が補完する。 この「余白の美学」に、私は強く惹かれました。

6語文の世界:想像力への挑戦状

6語文を知らない方のために、いくつか有名な例や、このジャンルの面白さを紹介させてください。

例えば、こんな作品があります。

“Wrong number,” says a familiar voice. (「間違い電話です」と、聞き覚えのある声。)

【解釈】 電話をかけた相手は、元恋人でしょうか、それとも別れた家族でしょうか。相手は番号を知っていてあえて他人行儀に振る舞ったのか、それとも本当に忘れてしまったのか……。「familiar(聞き覚えのある)」という単語一つで、切ない人間関係が浮かび上がります。

もう一つ、SFチックな例を。

Computer, did we bring batteries? Computer? (コンピューター、電池は持ってきたか? ……コンピューター?)

【解釈】 宇宙船なのか、無人島なのか。頼みの綱であるコンピューターからの応答がない。最後の「Computer?」という呼びかけが、絶望へと変わっていく様子がたった6単語で描かれています。語感をもう少し砕けて読んでみると「コンピューター、電池持ってきたよね? おーい、コンピューター?」ともよめるのでSF世界での日常の一節とも読めます。

いかがでしょうか。「ふーん、短い文だね」で終わらせるには惜しい、読み手の想像力とセットで初めて完成するエンターテイメントがここにあります。

昔から星新一のショートショートやO・ヘンリー(“賢者の贈り物“が有名)が好きだった私にとって、この6文字小説は癖にぶっ刺さったわけです。

開発のきっかけ:技術とアイデア

このジャンルを私が好きなのは理解していただけたかと思います。なぜ、作ろうと思ったかをお話しします。

1. なぜ既存のSNSじゃダメなのか

「じゃあTwitter(X)でやればいいじゃん」と思われるかもしれません。 でも、私は「生活感のない、物語だけの場所」が欲しかった。

また、日本には「俳句」や「短歌」という素晴らしい文化がありますが、これらは非常に敷居が高い。 正直に言います。私は小学校の夏休みの宿題で「短歌を一句提出」が出たとき、頭を抱えながらひねり出した苦い思い出があります。五・七・五・七・七のリズムや季語……。ふと立ち寄った喫茶店で、コーヒー片手にスマホで投稿するには、あまりにもルールが厳格すぎると感じていました。

もっとゆるく、でもTwitterのつぶやきよりは「作品」らしい。そんな場所がないなら、作ればいい。

2. 技術的な勝算(2年前のアイデアメモ)

実は2年ほど前から、Firebase(GoogleのmBaaS)を使って個人的にアプリ開発の勉強をしていました。 「技術的にSNSを作る基礎体力」はこの2年でついてきています。

  • 手段(技術): 2年前から培ったFirebase + Python,javaScript bart..(エトセトラ)の知識
  • 目的(アイデア): 最近出会った「6語文」の世界

この2つが自分の中でカチッと噛み合いました。「これなら作れる。いや、作りたい」と。

開発構想:日本版「6語文SNS」のルール

英語と違い、日本語はスペースで単語を区切らないため、そのまま「6単語」とするのは無理があります。そこで、独自の「ゆるいルール」を考えました。

ルール1:「6節」ならなんでもOK

厳密な単語数ではなく、「6つの文節(フレーズ)」で構成されていればOKとします。どこで区切るかは、書き手のセンス次第。これなら日本語でもリズムよく表現できます。

ルール2:画像から連想する「お題モード」

ゼロから物語を作るのが苦手な人のために(私自身がそうです)、「1枚の画像から連想して書く」機能を実装します。 例えば、「雨が流れる車窓」や「誰もいない公園」など、ディティールが曖昧な写真を日替わりで表示。「この写真の前後で何が起きたか?」を6節で書く。大喜利のような感覚で参加できるようにします。

六語噺SNSの投稿画面(開発中)

開発中の投稿画面(開発中であるため、変わる可能性があります)

目指すシステム

最後に、このSNSの「出口」について。 ただのWebサービスやよくあるウェブサイトで終わらせたくないので、こんなアイデアを考えてみました。

6語噺を投稿できるSNSを作りたい。エコシステムの構想編

ディジタル絵心がないのでイラストのベースはgemini proに作ってもらいました。ちょこっと修正したAI画像です。

「デジタルな投稿が、物理的な本になる」仕組みです。

  1. 花を贈る: 特に良い投稿には「いいね」の代わりに「花」を贈れます。
  2. 製本化: 花が100本集まった投稿者の作品は、実際に製本してプレゼントします。
  3. 循環: その本はAmazon等でも販売し(構想中)、売上の一部をサーバー代に充てつつ、投稿者にも還元する。

通常、Web上の投稿はサービスが終了すれば消えてしまいます。 しかし、本という「物理媒体」になれば、その物語は永遠に残ります。 ユーザーは美しい物語を楽しみ、投稿者は自分の言葉が本になる体験をできる。

ゆくゆくは、希望するユーザーの作品をAmazonなどで販売代行し、より広く読んでもらえる仕組み(※権利関係や還元方法は慎重に検討中)も作れたら面白いなと考えていますが、まずは「自分の言葉が本になって届く」という体験、製本化までを最優先に開発を進めていきます。

費用面について

 こういった話は、記事に盛り込まないことが多いと思いますが、あえて費用面の話をしようと思います。

「ずっと使っていたウェブサイトがいつの間にか閉鎖されていた。」というのは、インターネットを使っていると時たま経験しますが、名残惜しいし、ちょっと切ないです。

個人開発であることから、このようなウェブサービスの費用が切っても切り離せない問題になるのですが、費用捻出を考えると広告を入れるというのは簡単ですし、サーバー代を考えると閲覧数に応じて費用回収できるので、第一の選択肢として考えられます。しかし、物語を投稿するというサービスの特性上、激しい広告というのは世界観を崩してしまうので入れたくありませんでした。

 そこで、花を送りあうというシステムを思いつきました。

 購入は任意であり、どうしても「いいね!」を送りたいときに使える仕組みです。この購入の費用はほとんど製本費用になりますが、その一部を手数料としてサーバ代に充て、このサービスを使う人にとっては、花を送りあえる仕組み且つ物理的な本になるというメリットを享受できる+私としては、継続可能なサービスにできるという、そんな好循環を作りたいと考えています。

おわりに

公開はまだ先になりますが、これから少しずつ開発を進めていきます。 技術的にはReactとFirebaseを駆使していく予定なので、次回からは具体的な技術選定や実装の裏話(苦戦しているところも含めて)を「開発ログ」としてアップしていきます。

ここまで読んでいただきありがとうございます。「こんな機能が欲しい」「自分ならこんな6語文を書く」といったご意見があれば、ぜひコメントで教えてください。

では、次の記事で。 lumenHero

次回

関連記事は、2025年12月21日に公開予定 (あと4時間)

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