■ はじめに:ただのネットサービスと「クラウド」は何が違う?
スマートフォンやパソコンを使っていると、「クラウドサービス」や「クラウドコンピューティング」という言葉を当たり前のように耳にしますよね。
でも、ふと疑問に思ったことはありませんか?
「インターネット経由で使えるサービスなら、全部クラウドって呼んでいいの?」
「昔からあるウェブサイトやネット掲示板と、クラウドサービスって何が決定的に違うの?」
実は、単なるインターネット上のサービスと「クラウド」の間には、明確な境界線があります。今回は、その答えを知るために、クラウドの世界的な基準となっている「NIST(米国国立標準技術研究所)の定義」から、クラウドの本当の意味を再確認してみましょう。

(※本記事は、IPA(情報処理推進機構)が公開しているNISTの定義の日本語訳資料1を参考に解説しています。)
1. NIST によるクラウドコンピューティングの定義2
クラウドコンピューティングは、共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きまたはサービスプロバイダとのやりとりで速やかに割当てられ提供されるものである。
このクラウドモデルは 5 つの基本的な特徴と 3 つのサービスモデル、および 4 つの実装モデルによって構成される。
この文章にあるように、上記の5つの特徴を満たし、3つのサービスモデル、4つの実装モデルを持っていればクラウドと呼んでよいといえるというようです。
5つの基本的な必須条件(特徴)
以下の5つの条件を満たすものをクラウド(コンピューティング)といいます。
1. オンデマンド・セルフサービス
利用者が、サービス提供者の担当者と直接やり取り(電話やメールでの依頼など)をすることなく、必要なときに自分自身の操作だけで、自動的にサーバーやストレージなどを利用開始・設定できること。
2. 幅広いネットワークアクセス
インターネットなどのネットワークを通じて、標準的な仕組みでどこからでもアクセスできること。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットなど、様々な端末(クライアント)から利用できる柔軟性があること。
3. リソースの共用(マルチテナント)
サービス提供者が持つ巨大なコンピューティングリソース(計算処理能力やデータ保存領域など)を、複数のユーザーで「シェア(共用)」して使う仕組みのこと。
ユーザーは、自分のデータが世界のどこにある物理サーバーに保存されているかを正確に知ることはありませんが、効率よくシステムを利用できます。
4. スピーディな拡張性(伸縮性)
利用者の需要に合わせて、即座に機能や容量を拡張(スケールアウト)したり、逆に縮小(スケールイン)したりできること。
ユーザーから見れば、「いつでも必要なだけ、無限にリソースを引き出せる」ように感じられるのがクラウドの大きな特徴です。
5. サービスが計測可能であること
使ったデータ容量、処理能力、ユーザー数などがシステム側で常にモニタリング・計測されていること。
これにより、「使った分だけ料金を支払う(従量課金)」という仕組みが実現し、提供者にとっても利用者にとっても利用状況が透明化されます。
クラウドの提供形態
「3つのサービスモデル」と「4つの実装モデル」 クラウドは、どのように提供されるかによって以下の形態に分類されます。
【3つのサービスモデル(提供範囲)】
- SaaS(サース):ソフトウェア(アプリ)そのものをネット経由で提供する形態。ユーザーはただ利用するだけ。(ソフトウェア・アズ・ア・サービスの頭文字からSaaS)
- PaaS(パース):アプリを開発・稼働させるための「土台(プラットフォーム)」を提供する形態。(プラットフォーム・アズ・ア・サービスの頭文字からPaaS)
- IaaS(イアース):サーバーやネットワークなどの「インフラ」のみを貸し出す形態。自由度が最も高い。(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービスの頭文字からIaaS)
【4つの実装モデル(構築・利用の形)】
- パブリッククラウド:広く一般向けに提供されるクラウド(例:誰でも使える一般的なサービス)。
- プライベートクラウド:ひとつの企業や組織だけが専用で使うクラウド。
- コミュニティクラウド:共通の目的を持った複数の組織だけで共有するクラウド。
- ハイブリッドクラウド:上記を複数組み合わせて連携させたクラウド。
2. 具体例から考えてみる webメールはクラウド?
ここまで5つの条件と3つのサービスモデル、4つの実装モデルと一般化された話をしてきたため、少しイメージしづらいと思います。そこで、身近な「無料のWebメールサービス(GmailやYahoo!メールなど)」を例に、先ほどの「5つの特徴」に当てはまるか考えてみましょう。
2.1 5つの条件を満たすか?
Gmailで考えてみます。
- オンデマンド:自分でアカウントを登録すれば、人を介さず今すぐ使い始められます。(◯)
- 幅広いアクセス:スマホのアプリからでも、職場のパソコンからでもメールが見られます。(◯)
- リソースの共用:提供元の巨大なサーバーを、世界中のユーザーでシェアして使っています。(◯)
- スピーディな拡張性:容量が足りなくなれば、ボタン一つで追加容量を拡張できます。(◯)
- 計測可能:「現在15GB中、8GBを使用しています」と利用量が可視化されています。(◯)
見事に5つの特徴をすべて満たしていますね!よって、クラウドといえます。

アカウントはwebからオンデマンドに作れる。

googleが公開している大規模データセンターの1つとして、千葉の印西市にあるデータセンターがあります。実際は、中規模や小規模のサーバが秘匿されて分散展開されています。

幅広いアクセス(スマホ、PC(OS関係なく))ができる

web上のプラン変更だけで容量変更できる。

容量をいつでも監視できる。
2.2 提供形態は?
さらに分類すると、アプリとして完成されているので「SaaS」、一般公開されているので「パブリッククラウド」となります。つまりWebメールは「SaaS型のパブリッククラウド」と呼べるわけです。
まとめ:定義を知ればクラウドの本質がわかる
「クラウド」とは、ただインターネット上にあるというだけでなく、「いつでも自分で使い始められ、どこからでもアクセスでき、みんなで効率よくシェアし、必要に応じてすぐ拡張でき、利用量がしっかり管理されている」という、非常に高度で柔軟なシステムモデル(NISTの定義する5要素)のことでした。
この基準を知っておくと、今後新しいITサービスを見たり、業務でシステムを導入したりする際に、「これは本当の意味でクラウドのメリットを活かしているか?」を見極める強力な武器になります。ぜひ、身の回りのサービスがクラウドの条件を満たしているか、チェックしてみてくださいね。
【実践編】クラウド(IaaS)を実際に触ってみよう
「クラウド」という言葉の意味や仕組みについて解説してきましたが、より深く知るためには実際に自分で触ってみるのが一番の近道です。
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ここまで読んでいただきありがとうございます。
では、次の記事で。 lumenHero
参考資料
- NIST によるクラウドコンピューティングの定義:独立行政法人 情報処理推進機構 ↩︎
- 原文 : NIST Special Publication 800-145 ↩︎