
より線を「ねじ式端子台」にそのまま使っていませんか?
電子工作やDIYで、タイマーリレーや自作基板の接続に「ねじ式端子台(スクリューターミナルブロック)」を使うこと、ありますよね。

ねじ止め端子台

より線(中心の導線が束になっている電線)
初めての電子工作で、「5mmピッチの端子台により線(ストランド線)をねじ止めするとき、ちょうどいい端子や留め具が無かったため、どうにか撚ってまとめたり、はんだで固める、烏帽子端子などを加工してねじ止めしようとしていた」という話を聞きました。
しかし、このような方法だと、心線(細い銅線)が数本はみ出て、隣とショート(短絡)してしまう可能性が高く、危険です。
より線をそのままねじ止めする危険性
- 素線がばらけてショートする危険
- ねじの圧力で線が切れる
- 接触面積が不安定で、接触不良や発熱の原因になる
どの端子を選べばいいの?
配線を「安全」かつ「綺麗」に処理できる部品として「フェルール端子(棒端子)」があります。
しかし、私も初めて選定するとき、いざ買おうと商品を見ても、「種類が多すぎる…」「どのサイズが自分の電線に合うんだ?」と、選ぶのに非常に苦労しました。
この記事では、私の経験も踏まえ、フェルール端子とは何か?なぜ必要なのか?そして最も重要な「初心者のための選び方」を徹底解説します。

フェルール端子とは?
フェルール端子(Ferrule Terminal)は、簡単に言えば「より線の先端にかぶせる、小さな金属製の筒(スリーブ)」です。
より線の先端は、そのままではバラバラになってしまいます。フェルール端子を被せて専用の工具で「圧着(あっちゃく)」することで、全ての素線を一本の棒のように強固に束ねることができます。
多くの場合、絶縁体(プラスチック)の「スリーブ」が付いており、これが配線の根本を保護し、さらに色でサイズを識別しやすくしています。

フェルール端子を使って終端処理をするメリット
- 安全性の飛躍的な向上 最大のメリットです。素線が1本もはみ出さなくなるため、端子台でのショート事故をほぼゼロにできます。
- 確実な接続(接触不良の防止) 電線が一本の棒状になるため、端子台のネジやスプリングで均等に圧力がかかります。これにより接触抵抗が安定し、発熱や緩みを防ぎます。
- 作業効率のアップ 一度圧着してしまえば、先端が硬い棒状になるため、端子台の狭い穴にも「スッ」と差し込めます。現場での配線作業や、取り外しの際も非常にスムーズです。PLC(シーケンサー)や制御盤の配線では必須とされる理由がこれです。
AWG
AWG規格は、主に北米で使用される、電線の太さ(直径や断面積)を示すAmerican Wire Gaugeの略称のこと、Amazonなどで電線を見ているとよく見かける規格
フェルール端子の選び方 3ステップ
ステップ1:電流から「使用する電線の太さ」を決める
(※すでに使用する電線が決まっている場合は、ステップ2に進んでください)
そもそも、なぜ電線に様々な太さがあるのか?それは「流せる電流の大きさ(許容電流)」が違うからです。
細い電線に大きな電流を流すと、電線が発熱し、最悪の場合、被覆が溶けて火災に至ります。
ざっくりとした目安ですが、DIYや電子工作でよく使う電線の太さ(断面積)と許容電流の関係は以下のようになります。
| 電線の太さ (mm2) | 相当するAWG | 許容電流(目安) |
| 0.3mm2 | AWG 22 | 約 3A |
| 0.5mm2 | AWG 20 | 約 5A |
| 0.75mm2 | AWG 18 | 約 7A |
| 1.25mm2 | AWG 16 | 約 12A |

ステップ2:電線の太さに「フェルール端子のサイズ」を合わせる【最重要】
使用する電線が決まったら、その電線の太さ(断面積)に適合するフェルール端子を選びます。ここが最大のポイントです。
フェルール端子のサイズは、電線と同じく「mm2(断面積)」または「AWG(アメリカン・ワイヤー・ゲージ)」で表記されています。
初心者のうちは、絶縁スリーブ(プラスチックの襟)の色でサイズが規格化されている「DIN規格」の製品を選ぶと、一目でサイズがわかって非常に便利です。
【早見表】電線サイズとフェルール端子(DIN規格色)の対応
| 適合電線 (mm2) | 適合電線 (AWG) | DIN規格色 |
| 0.25mm2 | AWG 24 | ライトブルー |
| 0.34mm2 | AWG 22 | ターコイズ |
| 0.5mm2 | AWG 20 | ホワイト |
| 0.75mm2 | AWG 18 | グレー |
| 1.0mm2 | AWG 17 | レッド |
| 1.5mm2 | AWG 16 | ブラック |
| 2.5mm2 | AWG 14 | ブルー |
| 4.0mm2 | AWG 12 | グレー |
(※よく使われるサイズを太字にしています)
例えば、電子工作でよく使う「AWG 20」の電線や「0.5mm2」の電線を使うなら、フェルール端子は「0.5mm2用(DIN色:ホワイト)」を選べば間違いありません。
DIN規格のフェルール端子

DIN規格
ドイツ規格協会(Deutsches Institut für Normung)が制定するドイツの国家規格であり、日本でいうJIS規格に相当するものです。ドイツだけでなく国際的にも広く参照されている。
ステップ3:端子台(ターミナル)の穴に物理的に入るか確認する
ステップ2で選んだフェルール端子は、電線にはピッタリです。しかし、「その端子が、基板のねじ式端子台の穴に物理的に入るか?」を確認する必要があります。
AWG 16 (1.5mm2) の電線に、適合する「ブラック」のフェルール端子を圧着しました。しかし、使おうとしていた5mmピッチの小型端子台の穴には、端子が太くそのままでは入りませんでした。ペンチで少し成型してやっと入りましたが、もう少し大きい端子だと、端子台に刺さらないということになってしまいます。
電線と端子のサイズが合っていても、端子台の穴に入らなければ使えません。
【参考表】ねじ式端子台のピッチと使用可能なフェルール端子(目安)
| 端子台ピッチ | 端子穴のサイズ(目安) | 使用可能なフェルール最大サイズ(目安) |
| 2.54mm / 3.5mm | 小 | ~0.5mm2 (AWG 20) |
| 5.0mm / 5.08mm | 中 | ~ 1.5mm2 (AWG 16) |
| 7.5mm / 7.62mm | 大 | ~ 2.5mm2 (AWG 14) |
| 10.0mm | 特大 | ~ 4.0mm2 (AWG 12) |
フェルール端子の選定完了
ここまでのステップをチェックすることで適正なフェルール端子を選ぶことができたはずです。
電子工作でよく使う組み合わせ
5V~12V程度の基盤配線用
- 電線 0.75 mm2 (AWG 18)
- フェルール端子 グレー
- 端子台 5mm幅
12V(カーバッテリー) の電源及び基盤配線用
- 5V~12V程度の基盤配線用
- 電線 1.0 mm2 (AWG 17)
- フェルール端子 レッド
- 端子台 5mm幅
必須アイテム!「専用圧着工具」の選び方
フェルール端子と電線を用意しても、それだけでは使えません。必ず「フェルール端子用 圧着工具(圧着ペンチ)」が必要です。

なぜ専用工具が必要?
ラジオペンチや一般的な電工ペンチで潰そうとしないでください。
フェルール端子は、均等な圧力で全方向から「かしめる」ことで、電線を一本の棒のように束ねる設計になっています。ペンチで中途半端に潰すと、接触不良や、端子台の中で緩む原因となり、かえって危険です。
工具の種類とおすすめ
フェルール端子用の圧着工具には、主に2つの圧着形状があります。
- スクエア(四角)圧着タイプ圧着した先端が四角形になります。最も一般的で、ねじ式端子台やプッシュイン式端子台など、あらゆる端子台の穴形状にフィットしやすいのが特徴です。
- ヘキサ(六角)圧着タイプ先端が六角形になります。より均等に圧力がかかり、仕上がりが円形に近くなるため、丸い穴(特にプッシュイン式)への挿入がスムーズです。

初心者へのおすすめは?
どちらを選んでも大きな失敗はありませんが、「スクエア(四角)圧着タイプ」を一本土台として持っておくことをお勧めします。Amazonなどで数千円程度で、幅広いサイズ(例:0.25 ~ 6.0mm2)に対応したものが手に入ります。
まとめ:正しい端子選びで、安全で美しい電子工作を
これで、フェルール端子選びで迷うことはなくなるはずです。
- 使用する「電線の太さ(mm2 / AWG)」を確認する。
- 早見表を参考に、電線の太さに合った「フェルール端子」を選ぶ。(色で選ぶと簡単)
- 使用する「端子台のピッチ」を確認し、端子が物理的に入るか見当をつける。
- 必ず「専用の圧着工具」を用意する。
端子と工具が揃ったら、いよいよ圧着です。
正しい圧着は、安全な配線の「最後の仕上げ」とも言える重要な工程です。詳しい手順や、キレイに仕上げるコツについては、以下の記事で徹底解説しています。(近日公開予定)
ここまで読んでいただきありがとうございます。
では、次の記事で。 lumenHero