前回の振り返り
前回は、ロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)合成手順ということで、通販などで比較的安価に手に入る材料から結晶の母液の合成を行いました。
酒石酸ナトリウムカリウム合成手順。ロッシェル塩を作る【原料合成編】【ロッシェル塩実験 #1】
ロッシェル塩を作るため、Amazonなどで手に入る材料から、酒石酸ナトリウムカリウムを合成してみます。組成から実験分量まで詳しく実録。
今回は、前回作成した母液から「常温+自然気化」で結晶化できるか実験してみた結果です。タイトルでネタバレになっていますがきれいな単結晶は今のところできていません。しかし、多結晶での特性実験はネット上になく、面白そうだったので、単結晶の実験の前座として実験を行ってみました。
少し目を離した隙にクリスタルフォレスト
前回記事で作成した母液から、種結晶を作って取り出しその後、一度加熱ろ過し、種結晶を入れて結晶を作っていました。
結晶が成長しないな~と少し目を離していたら。

キムワイプをかぶせて静置していた結晶成長容器
全部1つの塊になってる!
上から見てみるとどうやら放置していた内に小さな結晶が複数重なりながら成長してしまったらしく、多結晶質のような状態になっていました。

結晶容器を上から見た様子

溶液は半分くらいになっている
もともとマスキングテープの上のところが液面でした。

取り出した結晶
出来上がった多結晶
単結晶を作るという目標としては失敗ですが、多結晶での圧電効果が見られるのかなどの情報がインターネット上になかったので、多結晶での圧電効果を確認してみることにしました。

ロッシェル塩の塊を砕いた様子

比較的大きな塊
取り出した結晶の塊のうち最も大きな塊は3cm×3cm程度になっていました。
圧電効果実験
圧電効果とは、結晶などに圧力を加えると電荷が生じて電圧が発生する現象のことです。ロッシェル塩は圧電効果を示すことが知られていますが、きれいな単結晶において顕著で、多結晶など欠陥の多い結晶だと途中の欠陥で電荷がトラップされてうまく取り出せないとされています。
銅箔テープを貼り付けて棒などでたたいて電圧が出るか実験してみました。
実験器具
実験に使用した器具一覧です。
| 器具 | 用途・備考 |
|---|---|
| 銅箔テープ | 銅箔テープ |
| オシロスコープ | 電圧の時系列的なプロット |
| ロッシェル塩結晶 | 得られた結晶 圧電効果実験対象 |
銅箔テープは以下のような両面導電のテープを使用しました。
銅箔テープ
両面導電(接着面は導電するものの多少抵抗がある
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実験のため電極(銅テープ)を貼り付けた様子

銅箔テープで結晶を上下で挟むようにして、電圧発生を確認します。
実験
圧電効果を確認するため、衝撃を与える必要があります。しかし、今回得られた結晶は単結晶ではなく、割れやすいため軽いボールペン(絶縁体棒)で叩いて、その時電圧が生じたかどうかをオシロスコープで確認してみます。

ボールペンで叩いてみる
実験条件メモ
室温:18.6℃
実験結果
以下が叩いたときのオシロスコープの波形です。

波形画像1 時間-電圧波形
数度叩いてみた結果の波形を以下に示します。

波形画像2 10回叩いてみた結果
考察:過渡現象
きれいな欠陥の少ない単結晶ではないものの、圧電効果が確認できた。1つ目の波形画像を見ると、叩いた瞬間に鋭いスパイクがあり、その後プラス側に過渡現象のような波形が見て取れる。
ロッシェル塩(ロッセル塩)はそれ自体に静電容量を持つらしくこれが生じた電圧に対して過渡応答的な電圧波形を生じさせたと考えられる。単結晶での波形が手元にないため比較検討できないが、欠陥が多い結晶であるのでこの欠陥が原因で電圧波形がバタついて今回の波形が得られた可能性もあるので単結晶での実験ができたら比較していきたい。
考察:得られた電圧と叩く方向
波形画像2にあるように、10回程度叩いた結果最大マイナス3V,プラス2V程度のスパイク電圧が得られた。叩く強さによる変動もあり、強くたたくほど電圧が高く出ることを確認できた。結晶をたたく方向としては、今回得られた結晶はきれいな単結晶ではないため、正確な方向が確認することが難しい。結晶の長い辺をたたくと電圧が出たため以下のような結晶方向であると考えられる。

画像3 成長した結晶の形 補助線付き
ロッシェル塩の音響特性を解説されていた参考[1]IPUT電子工学研究会の画像を引用させていただくと、結晶成長図の(丁)の矢印の方向に変形を加えると電圧が生じる。今回実験したときの叩いた方向”画像3”の薄緑矢印は下の図中の(a,b,c) = (1,2,0)から(-1,2,0)に近い方向なので、叩いたことで結晶中で(丁)のような変形が生じ電圧が生じたと考えられる。

結晶成長図 結晶の成長方向と特性
(IPUT電子工学研究会(旧ヤギラボ)”ロッシェル塩の電気音響的応用についてより引用)
まとめ
今回の実験では、3cm角という巨大なロッシェル塩の塊を得ることができ、オシロスコープによってその明瞭な圧電応答を確認することができました。
一方で、単結晶化に至らなかった点については、母液の着色(鉄イオン等の不純物混入の可能性)が核形成や結晶成長の阻害要因になったと推測されます。
そこで今回は、この結晶化を「最終成果」ではなく、不純物を取り除くための「結晶精製プロセス」として位置づけることにしました。現在の溶液が限界まで析出するのを待ってから全ての結晶を回収し、再度純水に溶かして「再結晶」を行うことで、次回はより透明度の高い、完璧な単結晶の育成に挑みたいと思います。
(次回予定地)
参考記事