1. はじめに:バラック配線からの卒業

前回、オペアンプとCR移相型回路を用いて、理論的に美しい「ピュアな1kHz正弦波」を作り出すことに成功しました。 しかし、ブレッドボード(バラック配線)のままでは、ちょっと動かしただけで配線が抜けたり、ノイズを拾ったりしてしまい、測定用の「道具」として使うには不安が残ります。
「せっかく設計した回路なのだから、いつでも使える『モジュール』として完成させたい」
そこで今回は、ユニバーサル基板へのハンダ付け実装と、3Dプリンタによる専用ケースの製作を行い、この回路を「1kHz正弦波発振モジュール」として完成させます。
前回
CR移相型正弦波発振回路の製作。アナログ回路と増幅器で「正弦波」を作る。【4580DD使用】
本記事では、オペアンプとCR素子のみを用いた「CR移相型正弦波発振回路」の設計・製作工程を徹底解説。なぜノイズから純粋な正弦波が生まれるのか、その理論から1kHzの回路設計、FFT解析による精度検証まで。アナログ回路ならではの「ピュアな波形」をその手に。
2. 回路の実装:6×4cm
まずは、ブレッドボード上の回路をユニバーサル基板へ移植します。 今回選定したのは、6×4cmというコンパクトなサイズの基板。この限られたスペースに、オペアンプ「NJM4580DD」と、CR部品、そして電源周りのパスコンなどを配置していきます。
- こだわりポイント: ただ動けばいいわけではありません。今回は「ケースに入れて外から見える」ことを前提にしているため、部品の並びが美しくなるように配置にも気を配りました。
CRの移相部分は今回のコアとなるところなので、回路としてわかりやすいように整列するように配置(ノイズを拾わないようにGND線を近くに通すなど工夫しました)

ユニバーサル基板にはんだ付け
3. 筐体設計:アナログ回路を「魅せる」窓
今回の工作のハイライトは、3Dプリンタで作ったこのケースです。 ただの箱ではありません。設計段階から「あるギミック」を仕込んでおきました。

そう、「アクリル窓」です。 モデリング時に基板部分が開口するように設計し、そこに切り出したアクリル板をはめ込みました。 デジタルなIC一発の回路とは違い、抵抗とコンデンサの組み合わせで動くアナログ回路には、機能美とも呼べる「美しさ」があります。
それを隠してしまうのは勿体ない。 黒い筐体と青い基板、整然と並べられた回路素子が見えるようにしてみました。
モデリングにはSCADを用いました。
基板サイズをある程度変えられるようにすると後々便利そうだったので、SCADで設計しました。

OpenSCADプレビュー
ケースの前面には出力端子用のM3ねじが通るように穴を開けています。
ACアダプタのソケットはぴったりではなく、ちょっと小さめにモデリングして、半田ごてなどで加熱しながら圧入することで印刷誤差を吸収できるようにしています。

印刷前のスライス
上下の蓋を分けて印刷します。
印刷に大体6時間くらいかかりました。
4. 組み立てと仕上げ
ケースが出力されたら、いよいよ組み込みです。

部品まとめ(ねじなどを除く)

- インターフェース:
- 電源: 側面にDCジャックを配置し、ACアダプタから手軽に電源を取れるようにしました。
- 出力: 前面に金メッキのターミナル(ポスト)を配置。ここから、あの「ピュアな正弦波」が出力されます。
- 配線: ケース上下を分ける形で、基板側とコネクタ側をリード線で接続。メンテナンス性も考慮しています。
5. 完成:マイ・リファレンス信号源
完成した姿がこちらです。

テプラが切れていたのを完全に失念してしまったので、マスキングテープで「GND」「1kHz Sinewave」とラベリングしました。
もう立派な実験用機材です。 オシロスコープに繋いで最終確認を行いましたが、基板化したことでノイズの影響も減り、ブレッドボード時代よりもさらに安定した波形が出ているように感じます。
6. まとめ
「作りたい波形を理論値で計算し、回路を組み、専用のケースに収める」 この一連のプロセスこそ、電子工作の醍醐味です。 Amazonで数百円で買えるキットも便利ですが、自分で設計してんだ「オンリーワンのモジュール」には、何物にも代えがたい価値があります。
これで、今後のオーディオ機器のテストや、フィルタ回路の実験などに使える強力な味方ができました。 皆さんも、ブレッドボードで「動いた!」で終わりにせず、ぜひケースに入れて「作品」に仕上げてみてはいかがでしょうか?
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