
初めに
これまで4回にわたり、どこのご家庭にもある汎用トランジスタを使って「パチッと切り替わる」タイマー回路を作り上げてきました。
第2回で紹介した「シュミットトリガ回路」において、2つのトランジスタの足元を支える共通エミッタ抵抗 \(R_e\)。実はこの小さな抵抗一つが、回路の「性格(しきい値や粘り)」を決定づける非常に重要な役割を担っています。
今回は、この \(R_e\) の値を変更することで、タイマー動作や出力の安定性がどのように変化するのか、オシロスコープの波形と共に徹底検証します。
動作原理がわからないと、今回の記事は意味が分からないと思うので、できれば初め(第一回)から、少なくとも第二回記事を見てから読むこと推奨!!(そこまで長くないので流し読みで構いません)
【実験】コンデンサの放電でLEDを「ぼわ〜っ」と消すタイマー回路を作ろう【TrST】#1
コンデンサの過渡応答とトランジスタだけで作る、ぼわっと消えるLED遅延タイマー回路を解説。555不要のシンプル電子工作で、時定数や仕組みも分かりやすく紹介します。シリーズとして、最終的にはオフディレイ・タイマー回路へと発展させていきます。
1. 検証環境と目的
検証には、純粋なシュミットトリガ回路(第二回までの回路)を用いました。
検証対象回路

比較検証抵抗
- \(330\Omega\)(基準): これまで使用してきたバランス型。
- \(1\text{k}\Omega\)(大きめ): しきい値を上げ、動作時間を伸ばす狙い。
- \(100\Omega\)(小さめ): どこまで攻められるかの限界調査。
それ以外の抵抗やコンデンサは第二回の回路と変えない。
2. 実験結果:\(R_e\) が生む「しきい値」の差
時間軸は共通して1目盛り1秒です。
330Ω (標準)の場合:切り替わりが比較的シャープ

\(330\Omega\) (標準)の動作波形
1kΩ の場合:粘り強く、動作時間が伸びる

\(1\text{k}\Omega\) の動作波形
\(R_e\) を大きくすると、Q2がONの時にエミッタに発生する電圧(壁の高さ)が上がります。これにより、コンデンサの電圧がより高い位置で「ON/OFF」の判定が行われるようになります。
- 結果: 基準の \(330\Omega\) よりもタイマーの動作時間が目に見えて伸びました。
- 波形: 非常に安定しており、ノイズにも強い「どっしりとした」切り替わりを見せてくれます。
波形はノイズに強いですがその分、立ち上がり(消灯から点灯への遷移)がわずかになだらかになるようです。これは、しきい値が上がったことで、放電曲線の「傾きが緩やかな領域」で判定が行われるためと考えられます。
100Ω の場合:牙を剥く「チャタリング」

\(100\Omega\)の動作波形
この波形だけ見ると、動作時間が短くなり、正常に動作しているように見えます。
しかし \(R_e\) を極端に小さくすると、判定の「壁」が低くなりすぎます。うまく動作することもありますが、不安定にチャタリングが発生することを確認しました。
- 結果: 安定しているときはうまく動作する。しばらくすると 「チャタリング(発振)」 が発生しました。
- 原因: 判定基準(しきい値)が低すぎるため、LEDが点灯して電池電圧がわずかにドロップした際、その変動を「消灯の合図」と誤認してループに陥っていると考えられます。特にボタン電池の電圧が低下してくると、この傾向は顕著になります。

\(100\Omega\)のチャタリング
3. 技術的考察:ヒステリシスの重要性
シュミットトリガの強みは、ONになる電圧とOFFになる電圧に差がある「ヒステリシス」にあります。
\[V_e \approx V_{CC} \times \frac{R_e}{R_{cq2} + R_e}\]
\(R_e\) を小さくしすぎることは、この「差」を削り取ってしまうことを意味します。
「遊び(余裕)」がないシステムは不安定になりがちですが、それは個別のトランジスタ回路でも全く同じですね。
今回の実験から、安定した動作には \(R_e\) は \(330\Omega\) 程度(\(R_{cq2}\) の半分程度) を確保するのが、ボタン電池駆動における「黄金比」であることが再確認できました。
最後に
回路の性格を左右する「足元の抵抗」。皆さんもぜひ、自分の好みの「キレ味」を探してチューニングしてみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
では、次の記事で。 lumenHero
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