【検証実験・考察】2Trシュミットトリガ回路のエミッタ抵抗の影響検証 【TrST】#5

RC回路とトランジスタで作る、ワンショット遅延回路の紹介記事のサムネイル。2石シュミットトリガ回路のエミッタ抵抗の動作時間への影響検証

初めに

これまで4回にわたり、どこのご家庭にもある汎用トランジスタを使って「パチッと切り替わる」タイマー回路を作り上げてきました。

第2回で紹介した「シュミットトリガ回路」において、2つのトランジスタの足元を支える共通エミッタ抵抗 \(R_e\)。実はこの小さな抵抗一つが、回路の「性格(しきい値や粘り)」を決定づける非常に重要な役割を担っています。

今回は、この \(R_e\) の値を変更することで、タイマー動作や出力の安定性がどのように変化するのか、オシロスコープの波形と共に徹底検証します。

動作原理がわからないと、今回の記事は意味が分からないと思うので、できれば初め(第一回)から、少なくとも第二回記事を見てから読むこと推奨!!(そこまで長くないので流し読みで構いません)

RC回路とトランジスタで作る、ワンショット遅延回路の紹介記事のサムネイル

【実験】コンデンサの放電でLEDを「ぼわ〜っ」と消すタイマー回路を作ろう【TrST】#1

コンデンサの過渡応答とトランジスタだけで作る、ぼわっと消えるLED遅延タイマー回路を解説。555不要のシンプル電子工作で、時定数や仕組みも分かりやすく紹介します。シリーズとして、最終的にはオフディレイ・タイマー回路へと発展させていきます。

1. 検証環境と目的

検証には、純粋なシュミットトリガ回路(第二回までの回路)を用いました。

検証対象回路

RC遅延のワンホット回路の出力を得てシュミットトリガ動作を行う回路図

比較検証抵抗

  • \(330\Omega\)(基準): これまで使用してきたバランス型。
  • \(1\text{k}\Omega\)(大きめ): しきい値を上げ、動作時間を伸ばす狙い。
  • \(100\Omega\)(小さめ): どこまで攻められるかの限界調査。

それ以外の抵抗やコンデンサは第二回の回路と変えない。

2. 実験結果:\(R_e\) が生む「しきい値」の差

時間軸は共通して1目盛り1秒です。

330Ω (標準)の場合:切り替わりが比較的シャープ

CR遅延回路_シュミットトリガ_330ohm

\(330\Omega\) (標準)の動作波形

1kΩ の場合:粘り強く、動作時間が伸びる

CR遅延回路_シュミットトリガ_1kohm

\(1\text{k}\Omega\) の動作波形

\(R_e\) を大きくすると、Q2がONの時にエミッタに発生する電圧(壁の高さ)が上がります。これにより、コンデンサの電圧がより高い位置で「ON/OFF」の判定が行われるようになります。

  • 結果: 基準の \(330\Omega\) よりもタイマーの動作時間が目に見えて伸びました。
  • 波形: 非常に安定しており、ノイズにも強い「どっしりとした」切り替わりを見せてくれます。

波形はノイズに強いですがその分、立ち上がり(消灯から点灯への遷移)がわずかになだらかになるようです。これは、しきい値が上がったことで、放電曲線の「傾きが緩やかな領域」で判定が行われるためと考えられます。

100Ω の場合:牙を剥く「チャタリング」

CR遅延回路_シュミットトリガ_100ohm

\(100\Omega\)の動作波形

この波形だけ見ると、動作時間が短くなり、正常に動作しているように見えます。

しかし \(R_e\) を極端に小さくすると、判定の「壁」が低くなりすぎます。うまく動作することもありますが、不安定にチャタリングが発生することを確認しました。

  • 結果: 安定しているときはうまく動作する。しばらくすると 「チャタリング(発振)」 が発生しました。
  • 原因: 判定基準(しきい値)が低すぎるため、LEDが点灯して電池電圧がわずかにドロップした際、その変動を「消灯の合図」と誤認してループに陥っていると考えられます。特にボタン電池の電圧が低下してくると、この傾向は顕著になります。
CR遅延回路_シュミットトリガ_100ohm_chattling

\(100\Omega\)のチャタリング


3. 技術的考察:ヒステリシスの重要性

シュミットトリガの強みは、ONになる電圧とOFFになる電圧に差がある「ヒステリシス」にあります。

\[V_e \approx V_{CC} \times \frac{R_e}{R_{cq2} + R_e}\]

\(R_e\) を小さくしすぎることは、この「差」を削り取ってしまうことを意味します。

「遊び(余裕)」がないシステムは不安定になりがちですが、それは個別のトランジスタ回路でも全く同じですね。

今回の実験から、安定した動作には \(R_e\) は \(330\Omega\) 程度(\(R_{cq2}\) の半分程度) を確保するのが、ボタン電池駆動における「黄金比」であることが再確認できました。


最後に

回路の性格を左右する「足元の抵抗」。皆さんもぜひ、自分の好みの「キレ味」を探してチューニングしてみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

では、次の記事で。 lumenHero

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