こんにちは、TUKUMO工房の管理人LumenHeroです。
「ゼロから飛ばす!ラジコン飛行機自作記 」(Z2F)の第二回です。
今回は、翼形状を様々検討し、最終的に低速での安定性と作りやすさを両立させるため、伝統的なClark-Y(クラークY)翼型を採用することとし、翼のパラメータや構造の設計を行いました。
![ゼロから飛ばす、ラジコン飛行機[Z2F]の第二回。飛行機の飛行特性を大きく決める主翼の形状の設計](https://tukumolog.com/wp-content/uploads/2026/02/Z2F-tumbnail-02.png)
1. 翼構造の比較と決定
まず、小型機における翼の構造として主なもの「単板翼」と「リブ・主桁構造翼(骨組み)」を比較しました。
| 構造 | メリット | デメリット |
| 単板翼 | 製作が非常に簡単、軽量。 | 翼断面(エアフォイル)の再現が難しい、強度が低い。 |
| リブ・主桁構造翼 | 翼断面を精密に再現可能、軽量かつ高剛性。 | 製作に手間がかかる。 |

リブ・主桁構造翼は”rib-and-spar wing”や桁リブ構造翼、骨組み構造翼などとも呼ばれるようです。
単板翼は、プラ板などをそのまま切り出したような翼のことです。
なぜ「リブ・主桁構造翼」を選んだのか?
今回の制御系には、小型ながら ESP32-C3 を使用します。 強度を保ちつつ肉抜きする加減もまだ手探りなため、全備重量は100gを超える可能性があります。(外で飛ばすのが面倒になるのでできれば100g未満にしたいと思っています。cf. 航空法) この重量を支えるには、単板翼では強度が不足すると判断し、しっかりとした骨組みを持つ構造を選択しました。
2. 翼断面の選定:安定性と製作性を両立する「Clark-Y」
リブ・主桁構造を採用するにあたり、次に重要となるのが翼断面(エアフォイル)の形状です。断面形状は、飛行機の速度域や安定性に直結するため、今回のプロジェクトの要件(低速でもふわふわ飛ぶこと)に最適なものを選ぶ必要があります。
データベースを活用した比較
世界中のエンジニアや愛好家が利用するデータベースサイト Airfoil Tools を活用し、数ある翼型の中から今回のサイズと想定飛行速度(レイノルズ数 \(Re \approx 40,000 \sim 70,000\) 程度)に適したものをリサーチしました。
Airfoil Tools clark-y
飛行機データベース 翼形状clark-yの特性
airfoiltools.comコラム:なぜ「レイノルズ数」を気にするのか?
飛行機の設計において、避けては通れないのがレイノルズ数(\(Re\))という指標です。一言で言えば、「空気の粘り気が、翼にどれくらい影響するか」を表す数値です。
1. 計算式(空気中の概算)
今回の設計では、以下の簡略式を使って計算しています。
\[Re \approx 70,000 \times \text{速度(m/s)} \times \text{翼弦長(m)}\]
2. 小型機ならではの難しさ
ジャンボジェット機のような大型機ではレイノルズ数は数百万に達しますが、今回のような30cm級の小型機では \(Re = 50,000 \sim 100,000\) 程度の非常に低い領域になります。
- 高レイノルズ数(大型機): 空気がサラサラ流れるイメージ。翼の性能が出やすい。
- 低レイノルズ数(小型機): 空気がネバネバしてまとわりつくイメージ。翼の表面で空気が剥がれやすく、失速しやすくなります。
3. 設計への活かし方
この「ネバネバな空気」の中でもしっかり揚力を稼いでくれるのが、今回選んだ Clark-Y のような少し厚みのある翼型です。
設計の最初にレイノルズ数を計算しておくことで、「理論上ちゃんと飛ぶ形状」を絞り込むことができます。(専門ではないので、ところどころ間違ってるかもしれません(; ・`д・´))
レイノルズ数や設計のしやすさからエアフォイルには”Clark-Y”を選択。
クラークY翼は以下の画像のような形状です。下面が平らなので、加工がしやすく初心者である私でも作りやすいかなと思います。

翼の構造(ハイブリッド・フレーム)
- リブ(骨組み): 2mm厚の発泡ポリスチレンボード。OpenSCADで設計した精密なClark-Y翼型。
- 主桁(背骨): 2mm径のカーボンロッド。翼の最大厚部(前縁から28%)を貫通し、剛性を確保。
- 前縁・後縁: 2mm径の竹ひご。墜落時の衝撃を逃がし、ビニールを張る際のガイドとなる。
- 翼面: 極薄のビニール。軽量化。
調べてみると墜落時によく折れたりするのが前縁の竹ひごらしいため、カーボンロッドよりはやわらかい竹ひごを使うことにしました。(最悪折れても安いので問題なし+削りやすいのでちょっとした修正がしやすい)
3. 翼弦長の計算:アスペクトは5~7が安定
翼型が決まったら、次は具体的なサイズを決定します。今回は初めての設計ということもあり、翼の付け根(翼根)から先端(翼端)まで同じリブを使用する「矩形翼(くけいよく)」を採用しました。上から見た時に長方形(または平行四辺形)になるため、製作が非常にシンプルになるのがメリットです。

アスペクト比の選定
ここで重要になるのが、翼の「細長比」を示すアスペクト比(\(AR\))です。
- 翼弦長(Chord): 翼の前後の長さ。
- 翼幅(Span): 翼の左右の長さ。
- アスペクト比 (\(AR\)): 翼幅 \(\div\) 翼弦長。
一般的に、自作機や小型機においてアスペクト比を5〜7程度に設定すると、低速走行時の安定性が確保しやすく、扱いやすい機体になると言われています。
具体的な数値設計
今回の目標とする機体サイズから、以下の数値を算出しました。
- 想定する翼幅: \(30\text{cm} \sim 40\text{cm}\)揚力との兼ね合いで調整予定
- 目標アスペクト比: \(5 \sim 7\)
- 算出される翼弦長: \(6\text{cm} \sim 8\text{cm}\)
\[\text{翼弦長} = \frac{\text{翼幅}}{\text{アスペクト比}}\]
この計算に基づき、今回は翼弦長を 8cm と設定しました。
また、翼の厚みについてはセオリー通り翼弦長の \(8 \sim 10\%\) (約 \(6 \sim 8\text{mm}\))を確保することで、構造的な強さと揚力のバランスを最適化しています。
※厳密には、航空工学だと以下のアスペクトの式が正しいですが、矩形翼だと式変形で上の式になります。
\[AR = b\text{(翼幅)}^2 / S\text{(翼面積)}\]
まとめ:長くなったのでここまで。
設計の理論背景や素材の選定理由など、書きたいことが山積みで少し長くなってしまいました。
当初は OpenSCAD での型紙作成まで紹介する予定でしたが、盛りだくさんすぎて4,000文字を超えそうなので(!)、今回は「設計編」としてここで締めたいと思います。
今回決定した、機体のスペックを左右する重要なパラメーターは以下の通りです。
今回決まったパラメータ
| 項目 | 決定した内容・数値 |
| 翼形状 | リブ・主桁構造翼 |
| 翼断面(airfoil) | Clark-Y |
| 翼幅 | 30~40 [cm] |
| 翼弦長 | 8 [cm] |
| 翼の厚み | 6~8 [mm] |
低速でも「ふわふわした飛行」を目指し、安定性重視の伝統的な数値に落ち着きました。
次回予告:OpenSCADでデジタル型紙を作成する
次回は、今回算出したこれらのパラメーターを実際にOpenSCADへ入力し、リブの3Dモデルから切り出し用の型紙データを作成する工程を紹介します。お楽しみに!