【検証】AliExpressの「350個680円」激安トランジスタセットは本当に得なのか?

はじめに(結論)

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

新年といえば「福袋」ですが、電子工作ファンにとっての福袋は、AliExpressの「激安アソートセット」かもしれません。 何かと国内サイトだと手に入りにくいような部品が手に入るのがアリエクですが、ほかの回路素子などを買うにあたり、サーフィンしていると「表面実装トランジスタ・ダイオード 350個アソート」というのが目に留まりました。

そのお値段、なんと680円。送料を含めても1個あたり約1.9円という激安ぶりです。 「安物買いの銭失いになるか?」「また在庫を抱えるだけか?」と悩みつつ購入してみましたが、結論から言うと「自作基板派の常備薬として最高」な一品でした。

今回は、その驚きの内訳と、本当に得だったのかを詳しくレビューしていきます。

今見たら高くなってました。そのうちセールで安くなる?

購入した商品の概要

今回購入したのは、「SMD Transistor and Diode Assortment Kit」というラベルの貼られたパッケージです。

  • 価格:680円(購入時レート)
  • 入数:35種類 × 各10個 = 合計350個
  • 単価:約1.94円 / 個
  • パッケージ:SOT-23、SOD-123、SOD-323 などの表面実装パッケージ

国内のパーツショップでバラ買いすると、安くても1個10円~数十円はするので、単純計算で1/5以下の価格ということになります。リール単位(数千個)で買うほどではない個人の試作・修理用途としては破格です。

アリエクで購入したトランジスタアソートがリールで届いた

表面実装用なので、小さなリールに入ってます。

中身のラインナップが「強すぎる」件

安いだけなら他にもありますが、このキットの真価はその「ラインナップのセンス」にあります。電子工作で回路図を引く際に出てくる「ド定番」がほぼ網羅されていました。

1. 和洋折衷の汎用トランジスタ

ユニバーサル基板で工作する際、私はよく東芝の「2SC1815 / 2SA1015」を使いますが、海外の回路図(ArduinoやESP32の作例など)では「2N2222 / 2N3904」が指定されていることが多々あります。 このキットには、その両方が含まれていました。

  • 日本定番系(互換):C1815 (NPN), A1015 (PNP)
  • 海外定番系:2N2222, 2N3904 (NPN), 2N3906 (PNP)

これらが手元にあれば、ネット上のあらゆる回路図を、定数を読み替えることなくそのまま試すことができます。

2. マイコン工作に必須のFETとダイオード

RP2040やESP32など、3.3V系のマイコンを扱う際に嬉しい部品もしっかり入っています。

  • 2N7002 (Nch MOSFET): 信号レベル変換や、マイコンから直接リレー・LEDを駆動する際のスイッチング用として非常に使い勝手が良い定番MOSFETです。
  • 1N4148 (スイッチングダイオード): 小信号用の基本中の基本。
  • SS14 / BAT54 (ショットキーバリアダイオード): 順方向電圧降下(Vf)が小さいダイオード。バッテリー駆動の回路や、マイコンの保護回路などに重宝します。
  • M7 (1N4007相当): 電源入力部の整流用として最も一般的なダイオードのSMD版です。

相場と一覧

相場と一覧です。購入量によっては相場がだいぶ変動しますが、100個くらいの小ロットで買ったときの10個当たりの価格の相場を大まかにまとめてみました。(おおまかな目安です)

型番 (ラベル表記)種類 (Type)主な用途・特徴概算相場(10個)
S9012PNP トランジスタ汎用・大電流 (〜500mA)¥100
S9013NPN トランジスタ汎用・大電流 (〜500mA)¥100
S9014NPN トランジスタ低ノイズ・プリアンプ用¥100
S9015PNP トランジスタ低ノイズ・プリアンプ用¥100
S9018NPN トランジスタ高周波(RF)増幅用¥120
S8550PNP トランジスタスイッチング・大電流 (〜1.5A)¥100
S8050NPN トランジスタスイッチング・大電流 (〜1.5A)¥100
BAV70双方向ダイオード高速スイッチング (カソードコモン)¥120
BAV99双方向ダイオード高速スイッチング (直列)¥120
MMBT5551NPN トランジスタ高耐圧 (160V)¥120
A1015 (2SA1015)PNP トランジスタド定番 汎用・オーディオ用¥150
C1815 (2SC1815)NPN トランジスタド定番 汎用・オーディオ用¥150
C945 (2SC945)NPN トランジスタ汎用・高周波用¥120
2SC1623NPN トランジスタ汎用増幅¥100
MMBT5401PNP トランジスタ高耐圧 (150V)¥120
BAT54Aショットキー高速・低Vf (アノードコモン)¥120
BAT54Sショットキー高速・低Vf (直列)¥120
2N2222NPN トランジスタ欧米の超定番・汎用¥100
2N3906PNP トランジスタ欧米の超定番・汎用¥100
2N3904NPN トランジスタ欧米の超定番・汎用¥100
2N7002Nch MOSFETド定番 小信号スイッチング¥150
MMBT4403PNP トランジスタスイッチング用¥100
A92 (MPSA92)PNP トランジスタ高耐圧ビデオアンプ用¥120
A42 (MPSA42)NPN トランジスタ高耐圧ビデオアンプ用¥120
MMBT2907PNP トランジスタスイッチング用¥100
DAN217双方向ダイオード超高速スイッチング¥150
BC807PNP トランジスタ欧州系の汎用¥100
BC817NPN トランジスタ欧州系の汎用¥100
M1 (1N4001)整流用ダイオード50V 1A¥80
M4 (1N4004)整流用ダイオード400V 1A¥80
M7 (1N4007)整流用ダイオード1000V 1A¥80
SS14ショットキー40V 1A (電源回路の定番)¥100
4148 (SOD-323)スイッチングD基本部品 (極小サイズ)¥100
4148 (SOD-123)スイッチングD基本部品 (小サイズ)¥100
4148 (LL34)スイッチングD基本部品 (円筒形)¥100

並べるだけで一苦労でしたが、とりあえず全部あることを確認しました。左から縦に並べています。

トランジスタアソートの中身を並べてみた
表面のMarkingのルールはあるの?

SMD(表面実装部品)なので、型番全部を印字することは困難です。そこで、代わりに識別用の短いコードを記述します。

このMarkingには厳格なルールはなく、多くは、デファクトスタンダード化したもの、例えば、2N3904なら、元々、米モトローラ社(現onsemi)が製造した際、「1A」を2N3904の識別コードとし、後ろにMotorolaの「M」をつけて「1AM」としました。これに倣い、ジェネリックメーカーもこれを印字したというもの。

または、それに加えて、ランクや製造情報の付加、増幅率などをもとに記述したものがあります。例として、S8050 の「J3Y」は、上で紹介したようなデファクトスタンダードのコード、J3: S8050であることを示すコードに加えて、Y: 増幅率(hFE)のランク(Yランク: 120-200, Lランク: 100-200などメーカーによる)が追加されて 「J3Y」と決まっていたりします。

実際に使ってみて感じたメリット・デメリット

メリット:ちょっとした修理に使える。試作に使いやすい

「あのトランジスタ、あと1個あったかな…?」とパーツケースを漁るストレスから解放されます。とりあえずこれを持っていれば、実験用基板を起こす際に「部品がないから注文待ち」という事態をほぼ防げます。

デメリット:SMDならではの難しさ

当然ですが、すべて表面実装部品(SMD)です。

  1. ブレッドボードに刺さらない: 変換基板を使うか、最初から生基板を削って回路を作る(マンハッタン配線など)必要があります。
  2. 型番の判読が困難: 米粒のような部品表面に「1AM」などのマーキングコードが刻印されているだけなので、一度パッケージから混ぜてしまうと、ルーペとデータシートの対照表がないと判別不能になります。保管には注意が必要です。
  3. 品質はそれなり: しっかり確認はしてませんが、おそらくセカンドソース(互換品)の詰め合わせです。厳密な特性が求められるアナログ計測回路などには不向きですが、スイッチング用途やホビー用途なら全く問題ありません。

まとめ:これは「買い」か?

個人的には、680円でこれだけの安心感が買えるなら文句なしの「買い」でした。ただし、すべての人におすすめできるわけではありません。一般的な意見をgeminiなどに聞いてみました。

gemini proの解答

以下のような人には、買いです

  • 自作基板(PCB)を発注するようになった人
  • ユニバーサル基板でもSMDを無理やりハンダ付けする猛者
  • 電子工作の修理や実験用に、とりあえずの在庫を持っておきたい人

逆に、ブレッドボードでのLチカができるようになったくらいメインの初心者の方には、扱いが難しすぎるため「死蔵在庫」になる可能性が高いでしょう。

とのことで、おおむね同じ意見のようです。

私の場合、最近は、KiCadなど基板を起こすことも増えましたし、空中配線でカオスな回路を作る際にも、この小ささは逆に武器になります。680円でこれだけの安心感が買えるなら、文句なしの福袋(アソート)でした。

部品管理だけは大変なので、小さめのジップロックに小分けにするか、タグをつけて保管しようと思います。 それでは、本年も良い電子工作ライフを!

SMD部品を使って作ってみた

非安定マルチバイブレータを空中配線して小瓶に収めた記事のサムネイル

【電子工作】表面実装用トランジスタで非安定マルチバイブレータ作ってみた。「空中配線」

アリエクで買った激安トランジスタセットを使って、基板を使わない「空中配線(Dead Bug)」でLED点滅回路を作ります。米粒サイズのSOT-23トランジスタとボタン電池CR2032を組み合わせた、超小型・高難易度の電子工作に挑戦。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

では、次の記事で。 lumenHero