【実験】2石シュミットトリガで「パチッと」切り替わるタイマー回路 【TrST】#2

RC回路とトランジスタで作る、ワンショット遅延回路の紹介記事のサムネイル。2石シュミットトリガ

前回の振り返り

「ボタンを押した時だけ、一定時間LEDを光らせたい」 電子工作をしているとよく遭遇する課題です。専用のタイマーIC(555など)を使えば正確な時間は出せますが、部品点数が増えて大げさになりがちということで、前回は、もっとシンプルに「コンデンサの過渡応答」と「トランジスタ」だけでつくる、情緒的に(ぼわ〜っと)消えるワンショットタイマー回路を紹介しました。

今回は、前回の回路から改良して、一定時間でパチッと切り替わるタイマー回路“2Trシュミットトリガ回路”を紹介します。

前回記事

RC回路とトランジスタで作る、ワンショット遅延回路の紹介記事のサムネイル

【実験】コンデンサの放電でLEDを「ぼわ〜っ」と消すタイマー回路を作ろう【TrST】#1

コンデンサの過渡応答とトランジスタだけで作る、ぼわっと消えるLED遅延タイマー回路を解説。555不要のシンプル電子工作で、時定数や仕組みも分かりやすく紹介します。シリーズとして、最終的にはオフディレイ・タイマー回路へと発展させていきます。

1.準備するもの

  • Q1, Q2: 2SC1815 (NPN)
  • Rcq1: \(4.7k\Omega\)
  • Re (共通エミッタ抵抗): \(1k\Omega\)
  • R1: \(4.7k\Omega\)(Q1のコレクタからQ2のベースへ)
  • R2: \(10k\Omega\)(Q2のベースからGNDへ)
  • C / R: 入力時定数用(例:\(10\mu F\) / \(100k\Omega\) など)

2. 回路図と仕組み

回路は、前よりは複雑ですが、比較的シンプルです。入力(sw)やトランジスタ1つ目までは、前回記事で紹介した回路とほぼ変わりません。
(以下の回路だと、ボタンを押していない間ON、ボタンを押すと一定時間OFFになる動作をします。)

回路図 : 2Trシュミットトリガ回路()

RC遅延のワンホット回路の出力を得てシュミットトリガ動作を行う回路図

回路図 RC遅延2Trシュミットトリガ回路

3. なぜパチッと切り替わるの?

前回の回路が悪く言えば「優柔不断」にダレていたのに対し、今回のシュミットトリガ回路は「即断即決」です。

その秘密は、2つのトランジスタが互いに影響し合うことで生まれる「正帰還」の仕組みにあります。

回路図の主役である2つのトランジスタ(Q1, Q2)と、彼らの足元にある共通エミッタ抵抗(\(R_e\))の動きに注目して、その動作を見てみましょう。

3-1. 待機状態:高い壁がそびえ立つ

まずは、ボタンを押す前の状態です。

コンデンサCは空っぽなので、Q1のベース電圧は \(0V\)。当然、Q1はOFFですね。

一方、Q2のベースには電源から抵抗を通じて電圧がかかっているので、Q2はONになり、LEDが点灯(または消灯、回路構成による)しています。

ここで重要なのは、「Q2が元気にONになっているため、共通エミッタ抵抗 \(R_e\) には大きな電流が流れ、エミッタの電圧(\(V_E\))が高くなっている」という点です。 Q1がONになるためには、この高いエミッタ電圧 \(V_E\) よりもさらに約 \(0.7V\) 高いベース電圧が必要です。つまり、今のQ1の前には「越えるべき高い壁」がそびえ立っている状態となります。
(動作の切り替わるような値をしきい値(閾値,スレッショルド)といい、Q1の動作閾値が0.7Vから \(V_E\) + 約\(0.7V\) に引き上がった状態と言えます。

待機状態の簡単な説明
RC遅延のワンホット回路の出力を得てシュミットトリガ動作を行う回路の待機状態の説明図

手書きのメモその1。

まず赤色の文字を見れば、コンデンサの充電電圧がQ1を0nできないところまで下がっている。または、充電されていないので、Q1はオフです。

次に、赤文字で見たようにQ1はoffなので、コレクタエミッタ間はほぼ電流が流れず、Q2のベース電圧は、単純な抵抗分圧で決まり、ベース電圧が0.7V以上になるように\(R_bq2\)を設定しておけばONになります。これが青色表記部分です。

Q2がONになっているので、で書いたように電流が流れて、出力がON状態になり、\(R_e\)に電流が流れて、VeだけQ1のエミッタ電位を上げるので、Q1がOFFの状態を保持します。

3-2. ドミノ倒し(反転動作)

ボタンが押され、コンデンサが充電された後、放電が始まります。Q1のベース電圧が徐々に上がっていき、ついに「閾値」を越える瞬間がやってきます。ここから一瞬の連鎖反応が始まります。

  1. Q1が目覚める: ベース電圧が壁を少しでも越えると、Q1がわずかにONになり始めます。
  2. Q2を引っ張る: Q1がONになりかけると、そのコレクタ電圧が下がります。すると、繋がっているQ2のベース電圧も一緒に引きずり下ろされます。
  3. Q2が弱る: ベース電圧が下がったQ2は、ONの状態を維持できなくなり、OFFに向かい始めます。
  4. ここが核心!(壁が崩れる): Q2が弱まると、これまで \(R_e\) に流していた大きな電流が減ります。すると、エミッタ電圧(\(V_E\))が一気に低くなります。
  5. 加速する変化: 目の前の「高い壁」が突然低くなったのですから、Q1にとっては相対的にベース電圧が跳ね上がったのと同じことになります。これでQ1は、ためらうことなく猛烈な勢いで完全にONになります。
反転動作の簡単な説明
RC遅延のワンホット回路の出力を得てシュミットトリガ動作を行う回路の反転動作の状態説明図

手書きメモその2。

ボタンが押されるので、コンデンサに充電するとともに、トランジスタ1つ目(Q1)がONに切り替わります。(赤色)

Q1がONになるので、コレクタエミッタ間に電流が流れ、この抵抗は、\(R_1\)と比べて十分に小さいので、こちらに大きな電流が流れ、\(R_1\)側にはほとんど流れなくなる。

すると、電流が小さくなるのでオームの法則より、\(R_{bq2})\)の両端電圧が下がり、トランジスタ2つ目(Q2)のベース電圧が下がる。(青色)

Q2のベース電圧が \(0.7V\) を下回ると、Q2は一気にOFFになります。(緑色) すると、これまでQ2が \(R_e\)(共通エミッタ抵抗)に流し続けていた大量の電流が、パタッと止まります。
この電流は出力に流れる大きな電流であったので、\(R_e\)に流れる電流が一気に小さくなることで、Q1のエミッタ電圧が下がります。

エミッタ電圧が下がるということは、相対的にベース電圧が高くなるということなので、一気にQ1はON状態に切り替わります。(これに応じてQ2はもっとOFFになります)

3-3. 帰り道は違う道(ヒステリシス)

コンデンサの放電が進み、電圧が下がって元の状態に戻るときも、逆向きの加速が起こり「パチッ」と戻ります。

この回路の面白いところは、「行き(ONになる電圧)」と「帰り(OFFになる電圧)」が違うという点です。一度ONになってしまえばエミッタの壁は低くなっているので、コンデンサの電圧がかなり下がるまでONの状態を粘り強く維持します。

この「行きと帰りで通る道が違う」性質をヒステリシスと呼びます。磁性体でよく聞く言葉ですね、この性質のおかげで、入力電圧が境界線付近で多少フラついても、チャタリングのを防ぐことができるのです。

定常への移行簡単な説明
RC遅延のワンホット回路の出力を得てシュミットトリガ動作を行う回路の定常への移行動作説明画像

手書きメモその3。

仕組みとしては、反転動作とほぼ同じで、Q1のベース電圧が下がっていくと、(赤色)あるところで、自身Q1のコレクタエミッタ電流(ベースエミッタ電流も含むがほぼ誤差)が\(R_e\)による電圧と約0.7Vを加えた電圧未満になると、急にOFFになります。
 待機状態と同じように、トランジスタQ2がONになり、(青色)そうしたことで\(R_e\)に流れる電流が大きく増加。これにより、Q1のエミッタ電圧が上がり、相対的にベースエミッタ電圧が急激に下がることで、パチッとQ1がOFFになります。(これによりQ2はONでより安定します)(緑色

4. 実際に組んでみた

実際に回路を組んでみました。

RC遅延のワンホット回路の出力を得てシュミットトリガ動作を行う回路図.実際に動作している回路の回路定数込みの回路図

組んだ回路の回路図(定数付き)

動作チェック

動画をみれば、スイッチを押してからパチッと切り替わり、しばらくしてからパチッと再度切り替わる動作ができていることが確認できます。

オシロスコープで波形確認

時間軸を1秒/1メモリにして、出力の電圧波形を確認してみました。

2石シュミットちりが回路の出力波形

出力の電圧波形

切り替えはほぼ直角で切り替わり、電圧低下時の元に戻る動作も多少なだらかになりつつも、過渡応答と比べると急激に切り替わっていることが確認できます。(戻る部分は抵抗\(R_e\)をいじると動作が変わって面白いです。時間があれば#5(おまけ編)で実験結果を報告しようと思います。)

5. まとめ

ここまで2回(全3回?予定!)にわたってお届けしたディスクリート・タイマー回路の進化、いかがでしたでしょうか。

  • 第1回: RC回路と1石Trで、アナログの基本である「過渡現象」と、ぼわ〜っと消える「情緒的な動き」を学びました。
  • 第2回: もう1石足して「シュミットトリガ」に進化させることで、曖昧な信号をパキッと切り替える「デジタル的な切れ味」を手に入れました。

専用IC(555)を使えば一瞬で終わるタスクですが、あえてトランジスタを組み合わせて「なぜそう動くのか」を追いかける過程には、現代のブラックボックス化した技術にはない面白さが詰まっています。

次回:実用的に使うなら?

今回紹介した回路で、パチッと切り替えるという動作が実現できました、しかし、「使い勝手」の面で気になる点があります。それは、「ボタンを押すと消灯し、時間が来ると点灯する」という、ワンショットスイッチの逆の動作になっていることです。

出力がワンショットタイマースイッチ(ボタンを押してから一定時間だけ動作させる)として使うには、動作を反転させる必要があります。

次回は応用編。3段目の反転回路を追加します! 本体の動作に干渉させず、大電流をパシッとスイッチングさせる実戦的な構成を紹介します。
次々回にはなりますが、1815トランジスタ3つだけで組む場合の回路も紹介予定です。

次回:PNPのトランジスタで作る反転

関連記事は、2026年2月6日に公開予定 (あと13時間)

次々回:NPNのトランジスタだけで反転

関連記事は、2026年2月6日に公開予定 (あと13時間)

今回のシリーズ記事一覧

ディスクリート部品で作るタイマー回路のシリーズサムネイル 2 記事
シリーズ

ディスクリートで作るタイマー回路

ディスクリート部品で作るタイマー回路の記事シリーズです

今回使用した部品の一覧はこちら: 関連記事は、2026年2月16日に公開予定 (あと2週間)